【DX海外事例紹介】小売DX成功事例6選
既存のデジタル需要にパンデミックが拍車をかけ、小売業界のDXが急速に進みつつあります。その成功事例を本稿では6つご紹介いたします。本ブログではこれまでもウォルマートや、アパレル業界の成功事例を取り上げているので、合わせてお読みいただければと思います。
目次
小売業界におけるDXの重要性
新型コロナウイルス感染症のパンデミック以前からEコマースは2020年に大きく成長すると予測されていましたが、強制的な実店舗の閉鎖によってその流れが加速され、多くの企業がオンライン販売にシフトすることを余儀なくされました。小売業界は、店舗での受け取りやカーブサイドピックアップの需要が2019年比で平均200%増加したことを受け、その対応に追われることになりました。またパンデミックが収束し実店舗が再開しても、その需要は高まり続けています。
コンサルティング会社のキャップジェミニが実施した調査によれば、消費者の45%が店舗でのデジタル決済オプションを増やし、40%がタッチフリーのセルフチェックアウトシステムを希望していることが明らかになりました。
このように、DXはこれからの小売業界に不可欠と言えそうです。オンライン注文、非接触型注文、カーブサイドピックアップ、セルフレジシステム、コストの最適化、AIを活用した商品の推奨等が戦略として挙げられますが、企業はどのように実施してきたのでしょうか。以下事例をご紹介します。
事例紹介
オールインワンのオムニチャネルで一貫した顧客体験の実現
ブランドアプリが一般的になる前から、小売大手のTargetはその開発に着手してきました。2016年までに、メインのブランドアプリに加えて割引やクーポンの検索、レジストリ作成等のアプリを整えました。しかし同社は、オンラインショッピングをさらに奨励してロイヤリティをあげたいと考え、すべてのアプリを統合することを決断します。そして開発されたのがTarget Appというアプリです。
顧客はこのアプリだけで、オンラインショッピング、店舗でも使えるモバイル決済、店舗案内、クーポン、ロイヤリティ特典等を利用できるようになり、オールインワンのオムニチャネル顧客体験が実現されました。また販売時点情報管理のシステムを同時に更新し、モバイルと店舗でのショッピングで同じバックエンド技術を使用できるようにしました。
一貫性のある顧客体験を提供したことが功を奏し、アプリのリリースを行った年の間に、オンライン売上は前年比32%増を達成しました。
アプリで最適な商品の提案
ビューティーブランドのSephoraは、2016年に小売デジタル戦略を本格的に組み始め、DXに取り組みます。当時の担当者によると、正しいファンデーションの色を見つけることができるかという点が買い物客にとって最大の懸念点だったそうです。そこで同社の社内開発チームは、「セフォラ・バーチャル・アーティスト」アプリを開発します。
これは顔のスキャン技術を使い、ユーザーが正しい色のファンデーションを見つけられるようにサポートするためのものです。顧客はカラーIQ番号を受け取ることができるため、商品を探す際に参考にできます。同社はこのアプリを拡張し、口紅やスキンケア製品において使えるようにしています。
発売後2ヶ月間で、アプリの試着回数は4,500万回を記録しました。消費者のニーズに直接対応することで、ブランドのロイヤリティ向上にも貢献し、今では購入の80%はアプリと連動したプログラムを通じて行われていると言います。
新規ユーザーのトレーニングサポート
小売業におけるDXのすべてが顧客向けというわけではありません。南アフリカ最大のオンラインマーケットプレイスを提供しているTakealotは、アフリカ大陸全域のサードパーティセラー(販売業者)のサポートに取り組んでいます。
販売業者が地理的に分散しているため、Takealotはマーケットの新規ユーザーを迅速かつリモートでトレーニングする方法を必要としていました。この問題を解決するために導入したのが、デジタル・アダプション・プラットフォーム(DAP)です。これによりガイダンスやセルフヘルプ機能を充実させることができ、販売業者は疑問を自力で解決して販売拡大に取り組むことが出来るようになりました。
現在Takealotでは、約30%の販売者がこのDAPプラットフォームを利用してトレーニングを行っており、すでにサポートチケットが12%減少しているといいます。自己学習が可能になったことで導入プロセスがスムーズになり、Takealotはサポートスタッフを他の業務に振り分けることができるようになりました。
拡張現実で商品利用を体験
オンラインショッピングでは、商品の返品が絶えません。しかし、顧客が購入することなく、また現物に触れることなく自宅で商品を試せるとしたらどうでしょうか。大手家具ブランドのイケアは、AR(拡張現実)を活用し、顧客が自分の家において家具が実際にどのように見えるか、可視化しました。
同社がこのARアプリの開発に着手したのは、店舗が都心から離れた場所にあることが多く、特に車を持たない顧客にとっては行きにくかったことが理由でした。その後新型コロナウイルスの大流行により、店舗への来店が減少または完全に停止したため、そのニーズが高まることになったのです。
このアプリでは、消費者は家具を選び、ARを使って自分の家に置いたときのイメージを確認することができます。そして、アプリの中で商品を購入することができます。購入前に可視化できるため消費者からの評判も良く、リリースから半年後には既に、無料のARKit部門のアプリで2番目の人気を博していました。これは多くのゲームアプリをも凌駕しています。
拡張現実で商品利用を体験
小売業のDXトレンドのひとつに、RFID(Radio Frequency Identification)タグがあります。これは電波を用いてタグのデータを非接触で読み書きし、商品をID化することができるシステムです。
デザイナーブランドのレベッカ・ミンコフは店舗にRFID技術を導入し、ショッピング体験の向上とチェックアウトの迅速化を実現しました。具体的には、RFID対応のミラーやテーブルを設置しています。試着室に設置した鏡は、商品に貼られたRFIDタグを読み取り、関連する商品を提案します。またテーブルは、顧客が商品を置くと情報がiPadに送信され、iPad上で会計を済ませることができます。
この新技術は、絶大な人気を博し、3割の顧客がスマートミラーの提案をもとに追加注文をするようになりました。そして売上は、3倍にまで増加しました。
他社と連携し、デジタルエコシステムを充実
食料品業界は、美容やファッション業界と比べ小売DXがさらに遅れていると言われています。しかしヨーロッパの食料品チェーンCarrefourは近年、Eコマースへの取り組みを強化するためにGoogleと提携しました。これによって顧客は、Google Homeやその他のGoogle音声製品をCarrefourのアカウントに接続することができるようになり、検索から商品購入、配達・集荷の希望設定まで進むことができるようになりました。小売業がGoogleと直接連携し、自社のEコマースとGoogleの音声アシスタントやデジタルエコシステム全体を統合するのは、本事例が初めてだといわれています。
さらに同社のバックエンドシステムの刷新も同時に行われました。Google Cloudの利用を開始し、すべての店舗、倉庫に共通の商品管理ツールを導入しました。このプロセスの一環としてGoogleは、各店舗の在庫滞留を削減するための自動レコメンデーション注文ツールを開発しました。
このシステムの恩恵を受け、導入からわずか2カ月後には不要な在庫を12%、コストを10%削減することに成功ししました。またその年の間に、Eコマースの売上は30%増加したという結果があります。
さいごに
小売業成長の鍵はDXにあります。オンラインショッピングがますます一般的になる中、技術の導入が売上を伸ばし、コストを下げ、事業を成長させることは、ご紹介した事例を通じてお分かりいただけると思います。
これらの事例を参考に、デジタル戦略を見直してみてはいかがでしょうか。