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【業界別DX】保険業界におけるDXの始め方

 住宅ローンを組んだり、新車の支払い計画を立てたり…保険プロセスにもどかしさを覚えている方も多いのではないのでしょうか。そのプロセスの効率性や顧客体験の向上に向けて、保険業界においてもDXが注目されています。本稿ではインシュアテックに注目し、その仕組みやメリットの本質に迫ります。

目次

保険業界におけるDXの重要性

 従来、保険は人に代わってリスクを引き受けることで、人や企業、資産をリスクから守ってきました。そのためには被保険資産の評価、顧客からの請求の確認、多様なニーズを持つ顧客に合わせて個別化した提案、保険料の支払い、不正行為や詐欺への対処など、多くの労力を要します。しかしその多くが未だに手作業で行われており、Investopediaの調査では保険の利幅が2~3%と低い結果が出ています。
 また顧客側の立場から見ると、たとえ十分な収入があってもクレジット・スコアが少しでも低ければ加入資格がない場合があります。それもこの産業がより良い顧客体験を提供できていないためなのです。

 DXを通して、このような現状を一変させることができます。例えば達成できることとして、以下のような事柄が挙げられます。

・ビジネスプロセスの効率化
・大量のデータの大規模な処理
・個々の顧客に合わせたサービスのカスタマイズ
・不正行為の回避とリスクの低減

 保険会社とそのパートナーはテクノロジーを活用することで、顧客満足度を高め、利益率も向上させることができるのです。

DXのメリット

1.オンラインチャネルの充実

 どんな手続きにも支店に出向かなければならなかったのは、それほど昔のことではありません。多くの書類に記入、サインし、マネージャーへのカバーレターを書くのです。しかし現在、多くのネットバンクでは、オンライン上で数分のうちに口座の開設や、保険の閲覧・購入まで行えるようになりました。この流れが加速して顧客はますますオンライン上のプロセスを期待しています。
 逆に言えば、テクノロジーを駆使し、ユーザーが利用しやすいチャネルでサービスを提供できれば、競争の激しい市場で生き残っていくことが出来るといえるでしょう。

2. 営業コスト削減と利益率向上

 近年台頭しているオンラインバンクは地域密着型の競合他社と異なり、わずか数カ所の拠点しか所有していません。このようにテクノロジーを利用すれば、物理的な資産をほとんど持たずにより多くの仕事を大規模に行うことが可能になるのです。
 大きなオフィスや手作業に依存し続ける場合と比べて容易にコスト削減や利益率向上を達成できることは、容易に想像がつくでしょう。

3. 不正行為やシステム上の無駄を排除

 保険業界は、顧客が保険料を支払うことで、リスクを軽減することを目的としています。しかし顧客の中には、自らの利益を追求する不誠実な者も少なくありません。実際、保険金請求の18%に何らかの不正が疑われており、支払われた保険料の10%が不正に請求されていることが明らかになっています。その額は、アメリカで年間800億ドルにものぼります。
 保険業界はこの不正を重大な懸念事項と認識していますが、手作業による不正の抑制には限界があります。そこでインシュアテックに注目すべきなのです。これを利用すれば、ビッグデータの傾向を利用して不正請求の可能性を明らかにできます。保険会社がこれまで経費削減のために追求調査せずに生じてきた悪質ユーザーの抜け穴も、特定できるでしょう。

4. 顧客データの保護

 保険会社や金融事業者は、サイバー犯罪の最大の標的です。保険事業者は膨大な量の契約者データを収集しているため、悪質な攻撃者はこれを売却したり、さらに多くの被害者を狙うために利用したりすることが可能なのです。そしてハッキングされた場合には、身代金を支払うことになるかもしれませんし、Equifaxがデータベース侵害を公表しなかったために7億ドルの罰金を科されたように、当局から制裁を受けることもあります。しかしインシュアテックを導入すれば、顧客データを暗号化し、脅威のベクトルを明らかにし、リスクを軽減することができます。

5. 顧客体験の向上

 インシュアテックは大規模なリクエストの処理や、個別化したサービスの提供を可能にします。例えば保険料の詳細な内訳を表示するアプリ、チャットボット、サインアップ、支払いの迅速化、サポートチケットの迅速な処理等が可能で、顧客体験の向上を実現できます。

インシュアテック5選

 「インシュアテック」とは保険(Insurance)とテクノロジーをかけ合わせた造語で、保険分野のフィンテックと位置づけられています。Investopediaはこれを「保険業界においてテクノロジーを使って節約を絞り出し、効率を向上させること」と定義しています。
 
 

1. ビッグデータ

 ビッグデータとは、指数関数的に大量、多様、高速に収集されたデータセットを指します。例えば数年前まで、保険会社が保有するデータは、顧客の収入、クレジットスコア、金融履歴のみでした。
 しかしビッグデータを活用すれば、顧客のライフスタイル(食事、健康、娯楽)、配偶者の有無、服のサイズ、購買習慣など、より大量のデータにアクセスすることができます。このような情報が数百万人の顧客から大規模に収集されるとパターンが現れ始め、保険会社は顧客のライフスタイルに合った予測的な提案を適切な価格で提供することができるようになります。

2. 人工知能と自動化

 チャットボットやダイナミックフォームのようなツールを導入すればリアルタイムで質問に回答できるため、人間の仲介なしに迅速に問題を解決することができます。これらのツールは、人工知能と予測的なワークフローで設計されています。そして顧客の反応に応じて特定のアクションを実行します。

3. ブロックチェーン

 ブロックチェーンも、従来の手作業で時間を要するプロセスに自動化をもたらすことができるテクノロジーの1つです。さらに、ブロックチェーンは多数決で意思決定が行われるように設計されています。したがって保険会社が市場での地位を悪用して価格を吊り上げたり、有害な保険を展開しないことを顧客に保証することができます。このように顧客データ管理や価格設定を含め、ビジネス全体を透明性を持って運営することができるようになるため、顧客との信頼関係が大事な保険会社にとってはチャンスの大きいテクノロジーと言えるでしょう。

4. IoT

 様々なモノへの搭載センサーやミニコンピュータを介して、ユーザーのモノの管理・制御を効率化することができます。例えばIoTに対応した鍵を使っていれば、世界中どこにいても、アプリで承認すれば配達員を通すことが可能です。
 保険業界においてはIoTのデジタルトラッカーを使えば、保険の対象となる車の制限速度を監視したり、保険の対象物の状態を追跡・更新できます。人為的な要素を排除し、顧客が保険契約の条件を守っていることを確認することが出来るようになるのです。

5. 従量制保険

 従量制保険とは、保険対象物の使用量に対して課金される仕組みです。現在は自動車保険への適用が一般的であり、自動車の種類、運転する時間帯、移動距離、道路状況、場所によって価格が決まります。
 ビッグデータを活用して詳細な情報の全てを顧客のリスクプロファイルに反映させれば、より柔軟な保険のしくみを構築でき、顧客体験の向上を実現できるでしょう。

インシュアテックの活用例

 前章では主要なインシュアテックを5つ紹介しましたが、実際にどのように活用し、保険業界のDXを助けているのでしょうか。

1. 保険金支払い管理

 数千、数百万人の契約者を抱える大規模な保険会社にとって、保険金支払いのプロセスを合理化することは重要な課題です。これまでは多くの企業が、補償内容確認から保険金支払いまでを手作業で行い、膨大な時間を費やしてきました。また、顧客が増えれば比例して従業員も拡大してきました。しかしインシュアテックを使うことで、これまでのプロセスの効率化にとどまらず、不正を大幅に排除するという高パフォーマンスまで叶えることができます。

2. アンダーライティングの自動化

 保険会社は保険の加入申し込みに際し、顧客のリスクプロファイルを評価して審査を行い、引き受けの可否を決定します。このアンダーライティングと呼ばれる引き受け段階は、補償内容決定からパッケージ提供までがかかっており非常に重要なものです。
 インシュアテックは、個々の顧客に関する膨大なデータポイントを評価して保険適用から価格決定までに使用されています。

3. スマートコントラクト

 スマートコントラクトはその名の通り、特定の条件が満たされたときに自動的に結ばれる契約を指します。保険金の支払い、保険レベルのアップグレード、口座の解約、潜在顧客の契約承認など、人間の介入なく、要件が満たされれば自動的に特定のアクションを実行する仕組みです。
 IBMの調査によると、実に42%もの人が保険会社を信用していないそうです。そのような中でスマートコントラクトという公平な仕組みを導入して人的要素を排除できれば、顧客の信頼にも繋がります。

4. 顧客の本人確認

 本人確認は、保険契約における最初のステップです。これを手作業で行っては保険会社の他の業務が停滞してしまう可能性があるだけでなく、顧客側も対応の遅さにもどかしさを感じることになります。また2021年には4200万人以上のアメリカ人がID関連の犯罪に巻き込まれ、520億ドル以上の損失を被りました。これは保険会社が見過ごすことのできるグレーゾーンではありません。
 保険会社は文書スキャンや生体認証などの身元確認の技術を利用することで、1件あたり1ドル未満で身元情報を迅速に取得・確認することができます。これだけで、引受、保険金支払い、詐欺防止を迅速化できます。

はじめの一歩

 上記のテクノロジーを活用してDXを推進していくためには、以下のステップが挙げられます。

①課題の特定
 プロセスを見直し、過剰に労力をかけていたり、顧客体験の改善できる部分など、課題を特定します。インシュアテックはあらゆることを可能にしますが、むやみに手をつけてはDXは成功しません。

②DX戦略の明確化
 課題が明らかになったら、ゴールを設定し、ロードマップを組みましょう。

③インシュアテックの導入

 以上のようなステップからDXを始めることができます。すぐにDXを推進することが難しければ、外部のコンサルティングに依頼するという手段もあります。自社のニーズと予算に合った方法で、着実に前進するために、サポートを検討してみてはいかがでしょうか。

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