【業種別DX】建設業界におけるDXの始め方
2021年のオリンピックによる建設開発ピークが過ぎ去ったことにより、新築件数は減少傾向にあります。しかし、ITの普及と共に建設業界におけるDX推進は注目されております。この記事では建設業界におけるDXの推進について、現状や課題を確認しながら一歩目を踏み出す為のステップをご紹介していきたいと思います。
目次
建設業界におけるDXとは
AIやICT、IoTなどのデジタル技術を導入することによって、建設業務の省人化や高速化、高度化をする事に置き換えられると思います。
少ない人数で、これまでよりも効率よく働く事を目指すのは、コスト削減や業務改善だけでなく建設業界が抱える人材不足や危険作業の軽減などが期待されております。
なぜDXが必要なのか
建設業界が抱える課題を解決する為と言えると思います。
加えて、老朽化したシステムを刷新するだけでも、生産性やセキュリティの向上に限らず、維持費の削減も期待され、さまざまな効果が期待されています。特に売上が1兆円を超える、「清水建設」、「大林組」、「鹿島建設」、「竹中工務店」、「大成建設」などのスーパーゼネコンと言われている大企業はDX推進に対して非常に力を入れています。
建設業界におけるDX推進のメリット
ここではDXを推進することによって、得られるメリットを見ていきたいと思います。
・3次元設計施工技術(BIM/CIM)の活用等により業務効率が向上
・省人化の推進
・老朽化したシステムの改革/刷新による業務効率化
・新たなビジネスモデルの創出
・デジタル世代が活躍しやすい職場作り
特に建設業界で注目されているのが、最新のICT技術を用いた3次元設計施工技術(BIM/CIM)導入による業務効率向上です。
“BIM/CIMとは、設計・施工・維持管理のすべての工程で、3次元データによる業務管理によって作業のミスや手戻りを減らし、生産性向上を目指す取り組みです。”
https://www.css24.jp/3d-data/bim-cim/ より
これまで2次元図面を使用してのプロジェクト遂行では作業の確実性やイメージのすり合わせに限界がありました。しかし、BIM/CIMを活用した場合、計画、調査、設計、施工、維持管理の各段階で3次元モデルを作成する事が出来る為、様々なメリットが得られます。
実際の現場では作業の確認やイメージに齟齬が起こりにくいという目の前のメリットもありますが、関係者全員への情報共有が容易になるだけでなく、大きな方針を決める際の合意形成がより早くなる効果も期待もできると思います。
建設業界が抱える課題と解決策とは
建設業界は「人手不足」や「建設従業者の高齢化」などいくつもの課題を抱えています。しかし、これらの課題はDXを推進する事で解決できる可能性があります。
人手不足
建設業の従業者が足りていない状況です。東京オリンピックを終えて新築案件が減少したとはいえ、求人ニーズは依然として高いままですが、建設業への就業者は減っている状況です。加えて建設業界では3Kといわれる「きつい」、「危険」、「汚い」のイメージが世間一般では強く、若手の就職が思うように集まらないのが現状です。建設現場では危険な環境下での作業を伴うことから、敬遠される傾向にあります。
建設従業者の高齢化
専門的かつ熟練した技術が求められている建設業界では、これまで担ってきた従業者が高齢化しています。技術・ノウハウの承継が急務なのですが、若者・就業希望者が不足している状況の為、次世代にノウハウを渡すことが困難になっています。
国土交通省は2018年3月に「建設業働き方改革加速化プログラム」が策定され、週休2日制の推進、長時間労働の是正、技術や経験に見合った給与など改革に動き出しました。DX推進を図ることで、建設業界に付けられた「3K」を払拭することによって若手や他の業界からの人材を獲得出来るかもしれません。加えて、人口減少で人材の減少は免れることが出来ないため、建設DXを推進することによって作業の省人化が期待できます。さらにICTやAIを活用し、これまでのノウハウを蓄積していく事にも力を入れていかないといけないと思います。
「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定~官民一体となって建設業の働き方改革を加速~」
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo13_hh_000561.html
建設業界でDXを推進する為に必要なステップ
建設業界において、DXの推進を成功させる為には、以下のデジタル技術が必要です。
ここでは、欠かせない5つの技術を「知る」事と始め方の「ステップ」を合わせてご紹介していきます。
建設業界では欠かせない5つの技術
ICT(Information and Communication Technology)
スマートフォン、パソコンやタブレットなどの電子端末を活用して、人をインターネット上で繋げるデジタル技術です。コミュニケーションの効率化から、具体的には遠隔地でドローンを操作し、上空からの撮影することで3次元測量に活用できます。
IoT(Internet of Things)
モノとインターネットを繋げる事で、「遠隔操作」と「情報収集」が出来る技術です。例えば、危険エリアにIoTセンサーを設置することによって、常に人が居なくても安全に情報収集が出来ます。
AI(Artificial Intelligence)
複雑かつ大量のデータを活用して、機械に反復学習させ処理できるようにプログラムされているデジタル技術です。例えば、現場やドローンで撮影した何百、何千枚の写真や映像をAIで分析する事によって、工事現場の進捗状況の判定に活用する事が出来ます。
クラウドサービス
インターネット上でアプリケーションやソフトフェアを利用できるサービスの総称です。インターネットさえ利用できれば、初期費用や運用工数が比較的安価に利用できます。例えば、現場の写真をクラウド上にUPして共有する事で、現場とのコミュニケーションを円滑に進める事が出来ます。
5G(第5世代移動通信システム:5th Generation)
従来の通信規格4Gと比較して、さらなる高速化、低遅延、多発同時接続が出来る通信技術です。5Gの導入によって大量のデータとスピードを兼ね備え、人間に頼っていた業務も機械が代行することも可能になります。
建設業界における、始めの一歩
「どうDXを進めていくべきか分からない」、「どのシステムやサービスを使おうかわからない」などたくさんの不安や疑問があると思います。上記のテクノロジーを活用してDXを推進していく為には次のステップが挙げられます。
・DXを推進する為の戦略を明確に定義する(まずは、目指すべき姿を明確に!)
・予算を決める
・データを収集/分析する
・システムやIoTを導入する
すぐにDXを推進/検討する為の人材を確保する事が難しい場合があるかと思います。そのような場合には、外部からコンサルティングやサポートを受けるという手段もあるので、自社のニーズと予算にあった方法を検討してみてはいかがでしょうか。
成功事例を紹介している参考サイト
清水建設の事例にみる建設業界における最新のAI活用
https://www.sedesign.co.jp/dxinsight/the-latest-ai-utilization-in-the-construction-industry
【DXツール導入事例】 大林組、データドリブン経営の推進に向けてデータプラットフォームを構築
https://www.automation-news.jp/2020/11/51648/
生産性の向上と働き方改革の実現に向けて 「作業の半分は遠隔で」を目指す、鹿島建設のDXへの一手
https://logmi.jp/business/articles/323504
竹中工務店、AWSで「建設デジタルプラットフォーム」を構築
https://japan.zdnet.com/article/35180982/
建設業が注目すべき、大成建設とマイクロソフトのO&Mへの取り組み
まとめ
建設業界が抱える「人材不足」や「建設従業者の高齢化」など大きな課題がいくつもあると思いますが、DXを推進する事によって課題を解決し、同時に更なる業務効率化や事業拡大が期待できます。
本日紹介した技術全てを使って「目指すべき姿」を考えてみる、と言うのは難しいと思いますので、まずはIoTセンサーを1つ活用したら何ができるようになるだろう、現場の写真を本社で共有できるようになったら何が嬉しいだろう、自社の強みを活かす為には、デジタルをどのように活用していくと良いか、DXに向けた第一歩を踏み出す参考になれば幸いです。