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【DX海外事例紹介】養豚業界におけるDX活用

本記事では、中国の養豚業界におけるDX事例を紹介したいと思います。

中国は世界最大の豚肉生産・消費国です。しかし2018年の夏にアフリカ豚熱が大流行し、安定的な供給が脅かされる事態となりました。治療薬がなく頭数を大きく減らすとともに、地域をまたいだ豚肉の移動も厳しく制限されて需給ギャップは拡大。中国の養豚業は早急な回復に迫られます。
そこで国や民間企業が取り組んできたDX事例を2つ紹介します。

目次

集中管理できる「養豚ビル」とは

まず国が取り入れたのが養豚業の「高層化」でした。見た目はオフィスビルやマンションと変わらぬ建物で、養豚を行うという取り組みです。
高層化の魅力は「集中管理」できること。階をまたいだ給水や給餌の一括管理が可能となり、平屋より効率的です。加えて臭気や糞尿処理もしやすくなります。環境問題から苦情が相次いだことにより養豚場が閉鎖に追い込まれてきたケースは、広東省だけでも8,000を超えます。

このようなリスクを抑えてエネルギー資源を節約するためにも、高度技術を駆使して集中的に管理できる体制を整える必要がありました。
また高層化によって、土地不足の問題も解決できます。近年中国では、マンションの増加から豚舎を建てる土地が不足しています。耕地面積はわずか10年の間に753万ヘクタールも減っています。よって、国民の重要な食肉を確保するために高層化が最適だと判断されました。広東省では2~5階建ての養豚場がすでに158カ所あり、今年10月には17階建ての高層養豚ビルが操業を開始する予定との報告もあります。
このように養豚業危機の打開に高層化が一躍買ってきた一方で、巨大な過密牧場には世論の反対もあります。文化や時代に合わせた検討が必要と言えるでしょう。

生産効率化からブランディングまで可能にする「AI養豚」とは

アリババグループをはじめとする民間企業も「AI養豚」を推進し、中国養豚業界の復活に取り組んできました。
例えば、給水や給餌をデジタルで把握・管理することで、豚舎の無人化が進められています。給餌ロボットは顔認証でそれぞれの豚の状況に基づいてエサを与えることができるため、摂取量の管理とともにエサ代が節約できます。その節約は、生産量が20万頭であれば年間1200万元(約2.3億円)にものぼります。
また体につけたQRコード型の印や声紋認識から個体管理も容易になりました。AIカメラを駆使すれば品種、年齢、体重、食物摂取状況、運動状況、免疫状況、幸福度まで取得・分析が可能で、そのデータ活用は多岐にわたります。

食品安全性の向上

膨大なデータをもとに、AIシステムは健康改善に向けた豚の活動計画まで自動的に提案、施行します。アリババグループのシステムは実際に死亡率年間3%削減、雌豚1匹あたりの出産を年間3頭増加という実績を上げています。
またAI企業の深聆科技も死亡頭数削減に取り組んできました。養豚業者の悩みの一つに子豚の圧死が挙げられます。これは母豚の匂いや体温に惹かれて子豚が腹部近くに集まることで生じる死です。作業員が叫び声を聞きつけて救助に駆けつけるも間に合わず、救出できるケースは少ないと言います。そこで深聆科技は、子豚が叫び声を上げると母豚に装着した端末が振動して微弱電流が流れ、体の位置を変えるよう促す仕組みを考案しました。こうして子豚は救われ、養豚業者の悩みを解決したのです。
このように従来の作業の効率化にとどまらず、AIを通して健康状態すなわち食品安全性向上への取り組みがなされています。

ブランディング

データ活用で新たなブランディングの機会も広がっています。追跡した豚の成長・健康状態を小売店舗と共有することで、いつどこでどのように育った豚なのかというトレーサビリティが実現できるからです。アリババグループは「出荷までに200キロも走り回った健康豚」というブランディングの未来図を示しています。

まとめ

中国は世界最大の豚肉生産国にも関わらず、中小零細事業者が大半を占め技術力の低さを課題としていました。しかし2018年のアフリカ豚熱を契機に官民が連携して積極的に仕組みを整え、技術のない畜産農家も効率よく飼育できるようになりました。そのDX推進は単なる生産サポートにとどまらず、トレーサビリティの実現、新たな付加価値による市場の開拓、そして消費者保護まで推進できる可能性を秘めています。
このように4年前の危機から回復を遂げてきた養豚界に支えられ、上海市はいまだ続くロックダウンにおいて市民に豚肉を配給することができています。

窮地をしのぐにとどまらず、新たなビジネスチャンスを広げてきた中国養豚業界に続き、DXを通して業務効率化から事業拡大まで検討してみてはいかがでしょうか。

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