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【DX基本編】新ツールの導入戦略

前稿でDX促進の障壁として紹介したように、多くの組織が新しい技術やツールの導入を試みるも、定着させるのに苦労します。調査によればDX失敗の原因として、実に14%の企業が「従業員がテクノロジーに対応できなかった」と回答しています。そこで本稿では、新しい技術の導入から定着までにかかる5つのステップや、あらゆるカテゴリーの人々への効果的なアプローチ方法を紹介します。新しいシステムの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

はじめに

新しいテクノロジーへの適応能力は、人によって様々です。したがって、あらゆるタイプの従業員の特徴を理解し、彼らが使いこなせるように継続的なサポートや、変化へのストレスの軽減に務めなくてはなりません。そして全員を味方につけていくことでDXの成功が見えてきます。
そこで出てくるのがテクノロジー導入曲線です。テクノロジー導入曲線とは、組織が新しい技術・ツールを導入した際の人々の反応を表すカーブモデルのことです。モデルは複数存在しますが、本稿では「技術革新の普及」について5段階で表した「イノベーター理論」を紹介します。

イノベーター理論

イノベーター理論は、1962年にスタンフォード大学のエベレット・M・ロジャース教授が著書”Diffusion of Innovations”(邦題『イノベーション普及学』)で提唱した理論です。彼は消費者の商品購入に対する態度を、早い順からイノベーター(2.5%)、アーリー・アダプター(13.5%)、アーリー・マジョリティ(34%)、レイト・マジョリティ(34%)、ラガード(16%)の5層に分類しました。
その割合は、下の図のような釣鐘型カーブのグラフで表されます。
イノベーター理論
ロジャースはこのカーブを商品普及の累積度数分布曲線のS字カーブと比較して比例することを確かめ、アーリー・アダプターへの普及が全体の普及へのポイントになることを見出しました。これを「普及率16%の論理」と提唱しました。
以下5つのカテゴリー別に、人々の特徴と効果的なアプローチ方法を紹介します。

イノベーター(革新的採用者)

イノベーターは新しいシステムの導入に積極的で、最も速いスピードで適応していく層です。彼らは、周囲の人にもその使用を勧める可能性があります。

①特徴
・新しいものへの熱意
・リスクを厭わない
・失敗を恐れない
彼らは既存の流れに逆らうことや、新しいものへの挑戦を好みます。スマートフォンの新しいモデルへのアップグレードや、βテスト中のツールを試すのもこの層が最初です。リスクを厭わず、失敗も恐れないので、新しいテクノロジーへの挑戦に貪欲なのです。

②アプローチ
イノベーターのモチベーションを高めるには、新しいテクノロジーがもたらすエキサイティングな機会に焦点を当てることです。彼らはさほど説得を必要としませんが、「新しく何ができるようになるのか」興奮させることで最もやる気にさせることができるでしょう。

アーリー・アダプター(初期少数採用者/オピニオンリーダー)

アーリー・アダプターはトレンドを形成していく存在です。イノベーター同様にリスクへの抵抗がない一方で、支持を表明して新ツールを利用する前に、導入理由を知りたがります。そして納得してから始めたいのです。

①特徴
・説得力がある
・初期のバグや挫折を乗り越えていく意志がある
・他者からの評価を気にする
彼らは新しいものについていち早く知ることを好みます。新しいソーシャルメディアサイトに登録したり、新しいツールを試してみたりと楽しみながら行動します。
イノベーターとの最大の違いは、自分の評判を気にすることでしょう。知識が豊富で流行に敏感であるように見せたいという願望があるのです。また、イノベーターが公の場でも失敗することに抵抗がないのに対して、早期適応者は多くの情報を収集し、実際に自分で試し、成功するとわかってから人に勧めていく傾向があります。

②アプローチ
アーリー・アダプターのモチベーションを高めるには、新しいシステムの開始に関するガイダンスを充実させることです。彼らは新しいツールについてすぐにでも情報を収集して、使い始めたいと考えています。よって開始におけるサポートの提供が効果的です。
文書やビデオ等様々なかたちでガイドやトレーニングを準備すれば、彼らはそれぞれの学習スタイルに合わせて素早く学習していきます。そして知識を深めるほど、開始から普及にまで貢献してくれる可能性が高まります。
さらにテクノロジー導入のテストを行う場合には、この層をターゲットにすることもおすすめです。彼らは小さな失敗や問題を受け入れ、課題を特定して改善していく意志があるので、理想的なテスターと言えるでしょう。また、一度使いこなせば説得力をもって他の人にも広めてくれます。

アーリー・マジョリティ(初期多数採用者)

アーリー・マジョリティは新しいテクノロジーに興味はありつつも、その有効性の証明を事前に求めます。したがって、現実的なアプローチが必要になっていきます。

①特徴
・論理的
・実用的
・データドリブンな思考
例えば買い物の際には、購入前に製品レビューを読み漁り、まずはテスターを試用します。そして十分に納得してから実際の購買行動にうつっていくのです。

②アプローチ
このカテゴリーの人々のやる気を刺激するには、採用する新しい技術がどのように問題を解決するのか示すことが必要です。彼らはデータに基づいた議論に反応するため、ケーススタディや実際の体験を提供すると効果的でしょう。そして、選んだソリューションが最も論理的であることを示すことでシステム導入の味方につけることができます。

レイト・マジョリティ(後期多数採用者)

レイト・マジョリティも、データに裏付けられたテクノロジー導入理由を求めます。しかしより慎重にその効果と導入意義を判断していくので、新技術が効果的であることを示す広範な研究と証明が必要です。

①特徴
・慎重
・論理的
・リスクを取るのを拒む
彼らはアーリー・マジョリティ層よりさらに慎重でリスクをおかすことを良しとせず、新しいものや変化に疑問を抱きます。彼らはトレンドにも反応しません。そして多くの人々の間に定着してきたのを確認したあとで、適応を検討し始めます。よって新ツール導入においても、なるべくギリギリまで試すことなく、仲間の反応や経験談を待っていることでしょう。

②アプローチ
イノベーターやアーリー・アダプターといった層の人々の声を活用して、新しいツールの有用性を示しましょう。そのために、まずは彼らの指示や評価の声を集めることがカギになります。その段階を十分に行い、データを用いて具体的な用途と利点を示すことで価値を証明していきます。そうすれば、レイト・マジョリティ層も効果を信じることができ、新しいテクノロジーの利用に意欲を見せ始めます。

例えば、社内のコミュニケーションをSlackに以降するとしましょう。利点として「メールよりも速くて簡単だ」という一般的なものを挙げただけでは、レイト・マジョリティにはかないません。彼らは事実を知りたいのです。代わりに、イノベーターやアーリー・アダプターに1週間のメール使用のコミュニケーションにかかった時間を計測してもらい、翌週にSlackで同様の実験を繰り返してもらいます。そして生産性比較のデータをレイト・マジョリティ層に提示すると良いでしょう。データに裏打ちされた議論や、一緒に働いている人からのデータであれば、彼らは変化に応じます。

ラガード(採用遅滞者/伝統主義者)

ラガードは、新しいテクノロジーに警戒心を抱いています。現状を好み、新しいものに不満を抱き、すぐに効果を感じられなければ見切りをつけて諦めてしまう傾向さえあります。最も頑固で、DXの促進に手こずる要因ともなる可能性があります。

①特徴
・懐疑的
・変化への抵抗
・テクノロジーへの警戒心
彼らは全体への利益だけでなく、自身にとってどのような利点があるのか知りたがります。逆にそれが明らかになれば不安が払拭され、新しいものを受け入れる覚悟を持てるでしょう。

②アプローチ
彼らを動かすには、新ツールが他の従業員の成功にどのように役立ったか具体的に示すことです。同じ組織やチームでの有用性が分かれば、懐疑的な意見を取り除くことができます。
ですからまずは他のメンバーからデータを集め、成功例を見せましょう。しかしレイト・マジョリティと異なり簡単には納得しません。

前述したSlackの例は、ラガード層には印象的に映らないでしょう。生産性の向上は素晴らしいことでも、コンフォートゾーンから出なければならないほどの個人的なメリットは感じられないからです。その代わり、ユーザー視点でのメリットに重点をおいて経験談を提供することが重要になります。このように説得していけば、重い腰を上げて行動を促すことも不可能ではありません。

まとめ

リスクを恐れないイノベーターも、頑固なラガードも、効果的にサポートすることで定着可能性やスピードが格段に向上します。全員を味方につけることも不可能ではありません。定着までには段階があることを理解し、長期的、戦略的に人々にアプローチしていきましょう。
ここで忘れてはならないのは、継続的に追跡していくことです。トレーニングや導入段階を測定したり従業員の反応を把握できれば、本稿で紹介したような具体的な対策の見直しも可能になりDX成功が見えてきます。新しいツールの導入に手こずっている場合には、ぜひ戦略見直しを検討してみてください。

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