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【DX基本編】デジタル・エコシステムとは

近年多くの企業がコネクションやパートナーシップの重要性を認識しています。その実践策の一例としてデジタル・エコシステムが挙げられます。本稿では、そのメリットや成功例などをご紹介します。

目次

はじめに

デジタル・エコシステムのニーズは高まっており、実際に世界のトップ企業7社のうち6社がこれを導入しています。企業は製品間のネットワークを構築したり、他の企業と提携してエコシステム全体でのリソースや専門知識の共有を行っています。
またトップクラスの企業でなくても、このようなネットワークの利益を受けることができます。他社1社と提携するだけでも、顧客基盤やブランドリーチ、リソースへのアクセスを格段に増やすことができるからです。

デジタル・エコシステムとは

デジタル・エコシステムとは、相互に接続された企業や製品のネットワークです。2社以上の企業が提携して、単独では提供できないような幅広い製品やサービスを提供することで成り立っている場合もあれば、1つの企業が複数の製品を連携させてエコシステムを構築する場合もあります。

成功例

アマゾンは世界トップ7の企業の1つであり、堅牢なデジタル・エコシステムの例としてよく知られています。同社は様々な自社製品やプラットフォームと共に、他社とのパートナーシップのネットワークも持っています。
一例として、Alexaを搭載した新型デバイスが挙げられます。Alexaを搭載した製品は、バーチャルアシスタント内蔵というかたちで顧客に付加価値を提供することができるようになりました。一方でアマゾンは、音声で作動するショッピングや検索機能を備えたプラットフォームを追加することができました。

一般的なタイプ

上記のアマゾンの例は、相互に接続された製品群と他企業とのパートナーシップを混合した包括的なデジタル・エコシステムでした。
しかし企業は通常、自社内のエコシステムに重点を置くか、パートナーシップに基づくエコシステムに重点を置くかのどちらか一方でエコシステムの構築に取り組みます。どちらのアプローチにも利点はありますが、異なる戦略やリソース配分が必要なため、どちらか片方を選択することが一般的です。

インハウス・エコシステム

1つ目は、1企業が相互に接続された一連の製品を提供する場合です。この取り組みによって、消費者の多様なニーズに対応できるようになります。連携した複数の製品を使用することで、追加機能や改善された機能を利用することができます。
例えばマイクロソフトは、クラウドのプラットフォームやタスク管理ツールに加え、これらのソフトウェアを搭載したデバイスといった一連のビジネス製品を提供しています。顧客は、マイクロソフトのソフトウェアがすでにインストールされているタブレットを簡単に購入することができ、生産性向上のソリューションのためにマイクロソフトの競合他社の製品をのぞく必要がなくなります。

複数企業のパートナーシップ

2つ目は、複数の企業が提携して共同で製品やサービスを提供するものです。これは合併や買収ではなく、すべての参加企業がネットワークに貢献することで利益を生み出します。

その規模はさまざまです。2社で構成されている場合もあれば、膨大な数の企業で構成されるケースもあります。

例えば、アマゾンは67社のパートナーからなるコア・ネットワークを持っています。またソフトウェアを扱うBright Patternという企業は、顧客体験(CX)のソリューションを提供するVisual Contactと提携することで、小規模なデジタル・エコシステムを構築しました。これらの2社は、「ソフトウェア」と「CXソリューション」という異なる専門性を持っています。そして協力することによって、新たなチームの雇用やトレーニングを行う必要なしにサービス向上を叶えることができました。

メリット

いずれのタイプのネットワークも、企業に広範なメリットをもたらすでしょう。健全なエコシステムは、企業の機動性を高め、コスト削減に貢献し、新たな収益源を開拓していきます。

情勢変化への備え

強固なパートナーシップや製品群は、変化への対応に役立ちます。というのも特定の製品の需要が低下した場合に他の製品に注力するなど、柔軟に戦略を変更していくことができるようになります。また、パートナー企業に頼ることもできます。そして力を借りられれば、需要の変化に応じてより迅速に対応できるかもしれません。
このメリットは、強固なエコシステムを持つ企業のコロナパンデミックへの対応を振り返ればよくわかります。顕著な例としてUberが挙げられます。この社内エコシステムは、ライドシェアサービスとフードデリバリープログラムのUber Eatsなどから構成されています。パンデミックによりライドシェアの予約は75%減少した一方で、同時にUber Eatsの需要は2倍以上になりました。このように社内に強力なエコシステムを持つことで、同社は壊滅的な経済危機に見舞われることなく事態に耐えることができました。

ファミリー製品で顧客ロイヤリティを築く

相互に接続された一連の商品の購入を促しましょう。顧客にとっても便利になるほか、パッケージ割引等のインセンティブを与えることもできます。
例えばソフトウェア会社の場合には、シングルサインインのプロセスを提供できます。これによってユーザーは、製品ごとに複数のログインをする必要がなくなります。
このメリットは消費者や企業がIoTを搭載したスマートデバイスを採用すれば、ますます大きくなるでしょう。例えばグーグルは照明やブラインド、ホームセキュリティシステム、ドアロックなどにスマート機能を搭載しており、これらは全てデジタル・エコシステムで相互に接続されています。

収益源の創出

すでにインフラを整備している企業と連携することで、短期間で新製品やサービスを展開できるようになります。製品化までの時間を数か月単位で短縮できたケースもあります。
例えばオンライン決済プラットフォームのアリペイは、パンデミックに対応するために、パートナー企業と協力してライフスタイル・プラットフォームを拡張しました。そのリリースはパンデミック発生から3週間以内という迅速な対応で、以下のような新機能を展開しました。
・医師とのオンライン相談
・リアルタイム感染追跡マップ
・医療の最前線で働く人々のための保険
・フードデリバリー
このようにデジタル・エコシステムの構築によって、短期間での商品・サービスリリースが可能になるため収益源を創出していくチャンスが広がります。

顧客獲得コストの削減

デジタル・エコシステムが企業にもたらすもう1つのメリットは、新規顧客の獲得コスト(CAC)を削減できることです。複数の企業が参加するタイプのエコシステムでは、広告をはじめとするコストに追加費用をかけずに、拡大した顧客基盤にアクセスすることができるようになります。マッキンゼーの調査によれば、強固なエコシステムを持つ銀行はCACを10~20%削減できているといいます。
このようなメリットの享受が可能になるのは、パートナーシップのおかげで、新しい機能や製品にアクセスできるようになるからです。新機能をゼロから作るコストをかけず、新規顧客に付加価値として提供できるようになるのです。また、パートナー企業の顧客ベースを自社のものに加えることで、CACコストを下げることができます。

例えばシティバンクはグーグルと提携することで、より若くデジタル志向の顧客を獲得することができました。またグーグルのデータ分析能力も利用することができるようになりました。よって、独自にシステムを構築するよりもはるかに費用と時間を節約することができたと振り返っています。

まとめ

新しいテクノロジーを導入するには時間と予算がネックになることがあります。しかし、健全なデジタル・エコシステムによって、これらを削減することができます。そして企業がDXを達成し、より俊敏に低コストで新製品を展開するなどビジネス拡大のチャンスにつながります。デジタル戦略の選択肢として、検討してみてはいかがでしょうか。

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