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物流業界における2024年問題とその対策(後編)

前回の記事では、物流業界における「2024年問題」の概要や影響について解説いたしました。2024年4月から適用される働き方改革によって、売上・収入の減少、長期間輸送の困難、ドライバーの収入の減少による離職といった影響が予想されています。これらは、単に負担を少なくすれば良いというわけではなく、かえって運送業者やドライバーの首を絞めることになります。このままでは、これまでの物流サービスが立ち行かなくなってしまいます。
本稿では、2024年問題に対して、政府や企業はどのような対策を講じているのかについて解説します。また、具体的な取り組みを行っている運送業者についても、合わせて紹介していきたいと思います。

目次

政府の取り組み

まずは、2024年問題に対する政府の取り組みについて紹介します。
2022年9月、国土交通省、農林水産省、経済産業省の三省を中心に、有識者、関係団体及び関係省庁からなる「持続可能な物流の実現に向けた検討会」を設置しました。そして中間取りまとめを経て、2023年6月に最終の取りまとめ案を作成しました。本報告は、物流事業者が提供価値に応じた適正な対価をきちんと受けられるとともに、物流業者、荷主企業・消費者、経済社会の「三方よし」を目指すものとしています。
それでは、報告書の具体的な内容について、以下で解説していきます。

(1)荷主企業や消費者の意識改革

2024 年問題の荷主企業の認知度は産業全体で5割程度、物流が危機的な状況に陥りつつあることを見聞きしたことがある消費者も5割程度にとどまっています。これは、行政による荷主企業や消費者の意識醸成の取組が不十分であることや、商取引において物流コストを明示しない慣習である店着価格制、商品販売において購入額が一定以上の場合等に「送料無料」とするサービスの存在があり、荷主企業や消費者が物流の状況について理解する機会が限られていることが要因であると考えられます。
物流プロセスには、物流事業者以外にも様々なプレイヤーが関与しています。企業や消費者にとっては、物流の状況について理解する機会が限られています。また、消費者にとっては BtoC 物流が注目されることが多い一方、物量ベースでは BtoB物流が占める割合が大きく、製造や店舗配送の過程において物流が重要な役割を果たしています。
ドライバーの拘束時間のうち、荷待ちや荷役作業時間等が約2割を占めていることや、再配達率が1割程度発生していること等は、効率の良い物流の障害となっています。したがって、荷主企業や消費者の理解を深め、意識改革を進めるためにも、

・荷主企業・物流事業者の物流改善を評価する仕組みの創設
・経営者層の意識改革を促す措置(サプライチェーンの全体最適化等)
・経営者層の意識改革を促す措置(再配達の削減、置き配の推進)
・物流に係る広報の強化

といった施策について具体化を推し進めていくべきだとしています。

(2)物流プロセスの課題の解決(非効率な商慣習・構造是正、取引の適正化、着荷主の協力)

(1)で先述したように、物流プロセスには様々なプレイヤーが関与しています。物流の適正化や生産性向上は、社会全体で解決する必要のある課題です。また、物流事業者内においても、元請と下請による多層的な取引構造となっていることで、実際に現場で運送を担当する事業者に負荷がかかりやすい取引構造となっています。持続可能な物流の実現を考えたときに、一部の事業者に大きな負担がかかる状況を解消することが必要であることを踏まえると、

・物流の合理化を図る措置の検討(待機時間、荷役時間等の労働時間削減に資する措置及び納品回数の減少、リードタイムの延長等)
・契約条件の明確化、多重下請構造の是正等の運賃の適正収受に資する措置の検討
・物流コスト可視化の検討(メニュープライシングやダイナミックプライシングの導入等)
・貨物自動車運送事業法に基づく荷主への働きかけ等及び標準的な運賃の制度の継続的な運用等
・トラックドライバーの賃金水準向上に向けた環境整備の検討

といった施策が必要であるとしています。

(3)物流標準化・効率化(省力化・省エネ化・脱炭素化)の推進に向けた環境整備

物流における人手不足は構造的なものであり、「2024年問題」だからといって2024 年だけの問題というわけではありません。そのため、物流標準化や新技術の活用等に中長期的に取り組んでいく必要があります。また、労働時間削減や人手不足対策に加え、カーボンニュートラルへの対応等を進めていくことが重要であり、これら諸課題への対策を推進していくためにも、

・デジタル技術を活用した共同輸配送・帰り荷確保等の検討(物流DX)
・官民連携による物流標準化の推進の検討
・物流拠点ネットワークの形成等に対する支援の検討(営業倉庫、トラックターミナル等)
・モーダルシフト(注)の推進のための環境整備の検討
・車両、施設等の省エネ化・脱炭素化の推進に向けた環境整備の検討
(注)モーダルシフト:トラック等の自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換すること。物流業務の省力化、及び物資の流通に伴う環境負荷の低減に有効とされている。

といった施策を進めていくべきであるとしています。

出典:令和5年6月 持続可能な物流の実現に向けた検討会「持続可能な物流の実現に向けた検討会 最終取りまとめ(案)」https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001614996.pdf

2024年問題に対する施策

さて、2024年問題に対する物流業界の対策とはどのようなものがあるのでしょうか。まずは施策の概要についていくつかを紹介します。さらに、2024年問題を乗り越えるためのヒントになりうる、具体的な事例を紹介します。

労働環境の改善

まず、物流業界では労働環境の改善が求められます。ドライバーを中心とした人材確保が喫緊の課題であり、働きやすい環境づくりや給与体系の見直しなど、従業員の待遇向上につながる対策が必要です。特に、賃金低下による社員の収入減少に対しては、適切な対策を考える必要があります。また、労働時間の縮小によって仕事量が減少する可能性もあるため、他の業務やスキルの育成に力を入れることで、従業員の能力開発・スキルアップを図ることも重要です。

プロセスの最適化と効率化

物流業界では、労働時間の削減と生産性向上を両立させる必要があります。そのためには、荷待ち時間や荷役時間の削減が必要です。荷待ち時間を削減するためには、先着順の荷下ろしや柔軟な時間指定など、適切な調整を行う必要があります。また、荷役作業の効率化には、荷役機械の導入やパレット活用などの取り組みが有効です。さらに、ITシステムの活用による運行計画の最適化やルートの見直しも効果的です。これらの取り組みによって、労働時間の短縮と業務の効率化を実現することができます。

技術革新とデジタル化の推進

物流業界においては、技術革新とデジタル化が重要なカギとなります。自動運転技術やロボット技術の導入によって、労働力の不足を補うことができる可能性があります。また、物流管理システムやクラウドベースの在庫管理システムなど、ITツールの活用によって業務の効率化や追跡管理の向上が図れます。さらに、AIやビッグデータ解析を活用することで、需要予測や在庫最適化など、より効果的な物流戦略の立案が可能となります。

産業間の連携と協力

物流業界における課題解決には、産業間の連携と協力が不可欠です。物流業者と荷主、流通業者などのパートナーシップを強化し、情報共有や効率的な連携を図ることが重要です。例えば、荷主側が輸送時間の柔軟な設定や効果的な配車手法の導入など、物流業界の効率化に寄与する取り組みを行うことができます。また、政府や業界団体との連携も重要であり、政策や規制の見直しに対して積極的な提案や意見を発信することで、物流業界全体の課題解決に寄与することができます。

■事例1—バケツリレー方式による輸送—
1人のドライバーが長距離輸送、たとえば大阪と東京を行き来するとなると、1日かけて目的地に向かい、到着後は積み荷を降ろしたあと車内で睡眠をとり、翌日には、別の荷物を積んで、出発地へと戻ります。この2日がかりの勤務は、ドライバーにとって大きな負担となっていました。また働き方改革が適用されると、長時間労働がしにくくなり、ドライバーの稼働時間や輸送量が減ってしまいます。収入まで減少してしまうことになります。
そこで考案されたのが、途中の中継地で積み荷を交換し、出発地点へ日帰りで戻ってくるという「バケツリレー輸送」です。
たとえば、新東名高速道路の浜松サービスエリアには、地元の運送会社と高速道路会社が設けた、バケツリレー輸送専用の「待ち合わせスポット」があります。関東、関西からやってきたそれぞれのドライバーがここで待ち合わせて積み荷を交換し、関東・関西間の行き来をせずに輸送を行う仕組みです。
このバケツリレー輸送により、ドライバーは日帰りでの勤務が可能になり、拘束時間の短縮につながります。しかも輸送量は変わりません。働き方改革が適用されても、収入を減らさずに済むというわけです。

■事例2—倉庫を活用した事業への転換(島根県出雲市の運送会社)—
事例1のバケツリレー輸送を行うためには、トラックの「待ち合わせスポット」が不可欠ですが、全国どこにでも同様の施設があるとは限りません。そこで注目されるのが、倉庫を活用した事業です。
島根県出雲市にある運送業者はこれまで、東京などへの長距離運送を主な業務としていました。しかし、新規参入による競争の激化や長時間労働、加えてこの2024年問題へ直面したことで、業務の見直しが求められていました。
そこでこの業者は、トラックの長距離輸送の事業から撤退し、倉庫を核にした地域の配送ネットワークの充実化へと舵をきりました。長距離運送のトラックが島根に荷物を運ぶとき、配達先までの細かいルートの配送が必要になって時間がかかります。そこで、この業者が拠点となる倉庫を設け、そこに各運送会社からの荷物を集約し、倉庫から地域の複数の地点への配送を担当することにしました。倉庫の運営で安定した収益を稼げるのに加え、地域の中距離までの配送で済みます。長距離運送を担う運送業者にとっても、細かなルートの配送を現地の業者に任せることができます。また、荷主にとっても、倉庫を活用することで、長時間労働の原因となっていた荷待ち時間を減らすことが可能です。まさに「三方よし」の事業転換といえるのではないでしょうか。

参考:NHK NEWS WEB「ビジネス特集 物流「2024年問題」 広がる“バケツリレー方式”」https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230310/k10014004061000.html

まとめ

物流には消費者や運送業者だけでなく、様々な事業者が絡み合って成り立っています。したがって、物流の2024年問題を解決するには、特定の事業者だけに対して改革を行っても問題解決には程遠いかもしれません。また、消費者1人ひとりにとっても無関係ではなく、身近かつ深刻な課題だといえます。持続可能な物流を実現するためには、全ての関係者(国、地方自治体、運送業者、利用する企業、消費者)が意識改革を推し進めていくべきでしょう。

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