【業種別DX】小売業界におけるDXの始め方
各業種別のDXの現状について、取り巻く環境やどのような取り組み・事例があるのか、各々の業種や業界での「DXの始め方」について纏めていきたいと思います。
本記事では、小売業界におけるDXについてご紹介します。
目次
コロナによる影響
新型コロナウイルスによるビジネスインパクトは悪いものばかりでなく、プラスに働いた面もあります。
確かに経済産業省によれば2020年小売業全体で前年より低下したことから、小売業界は慎重な姿勢が続いているといえます。くわえて、コロナによって訪日外国人旅行者減によるインバウンド需要の消失、長期化した緊急事態宣言下での外出自粛や店舗への営業時間短縮要請などに小売業界に大きなマイナス影響を及ぼしました。
しかしながら、店舗への外出が控えられる一方で在宅勤務や外出自粛などにより「おうち時間」が増加し、家電やオンラインショッピングなどの一部のカテゴリーは「コロナ特需」の恩恵を受けることができました。他にも食品や日用品などの生活必需品を扱う食品スーパー、ドラッグストアやホームセンターなどでは緊急事態宣言下でも営業を継続し、売上を順調に伸ばしました。コロナ禍においてネガティブな影響だけが注目されますが、そうでないことが分かります。
参照:経済産業省による統計
https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20211207hitokoto.html
参照:総務省統計局 家計消費状況調査
https://www.stat.go.jp/data/joukyou/pdf/n_joukyo.pdf
小売業界のITの活用事例
従来の店舗型小売業の場合、店舗や物流センターなどの巨大な設備や多くの従業員の力で成り立っているため、デジタル化の浸透が難しい面もあります。従来のビジネスモデルとデジタル技術を融合させ、いかにして新しい時代に合った販売体制を構築するかが重要になってきます。以下では実際の小売業界におけるDXをいくつか紹介していきます。
・ECサイトと実店舗の活用
ECの消費者にとっての魅力はなんと言っても、場所を気にせずどこででも買い物ができる点です。スマートフォンとソーシャルメディアの普及により、EC市場は拡大しています。経済産業省によればEC市場における消費は年々増加し、2019年には19.3兆円近くまで達しています。
しかしながら、日本のECの売上比率(EC化率)は2019年度で6.7%なのに対して、中国では36.6%と日本のEC化率は低いままです。EC市場はコロナによる影響でカテゴリー別の増減はあるにせよ、伸びしろがあるといえます。
また、事業者視点でも今までは実店舗を中心として運営していたアパレル店や飲食店が、売上確保のために積極的にEC分野の活用をはじめています。例えば実店舗スタッフによるSNS運用やライブ配信プラットフォームを用いたオンラインでの販売活動などです。このように今後EC市場規模は拡大していくと予想されます。
また、オンラインでのEC販売とオフライン実店舗の組み合わせが期待されています。実店舗がまだまだ小売の主流であることは間違いありません。
例えば中国では世界的にも高いEC化率を誇っていますが、オフライン店舗の出店ブームが起きているのです。その背景には商品を体験する価値を店舗で提供するという消費行動において重要な役割を果たしているからです。
商品に関しての下調べは事前にネットで調べても、実際に届いた商品は想像していたものとは異なることが少なくないと思います。実際に商品を手に取って見る・使う・触るといった体験は必要だと考えられるので実店舗の活躍は十分に考えられます。
参照:電子商取引に関する市場調査まとめ
https://www.meti.go.jp/press/2021/07/20210730010/20210730010.html
参照:中国の出店ブーム
https://diamond-rm.net/ec-epayment/76786/
・無人化対応
無人化推進によるセルフレジの導入やキャッシュレス化などのIoT技術を導入することで店舗の業務効率化や省人化も期待されています。背景には、コロナ禍のニーズに合った非接触・非対面でありながら、人件費率の見直しも後押ししています。日本でもアメリカの「Amazon Go」のような誰もいないハイテクな無人化リアル店舗が増えていき、消費者の新たな購買行動がスタンダードになる未来はそう遠くないでしょう。
小売業における、始めの一歩とは
とはいえ今すぐに店舗の無人化や自社ECサイトの立ち上げを推進するのは難しいかもしれません。簡単なところから、デジタル化を進めてビジネスモデルや働き方変革を目指す上での始めの一歩としては以下の観点が挙げられます。
・勤怠管理
勤怠管理は異なる雇用形態の従業員を抱える小売業では大きな負担となっています。DXを推進することによって、シフトの作成、タイムカードの管理、勤務データの集計などを一元管理できるシステムやツールを導入することで、業務効率化が可能になります。自社の規模や業務形態に合わせて勤怠管理システムを構築することもできますし、クラウド型のサービスを導入することも効果的です。
・単純作業の自動化
日々の業務データをエクセルファイルに転記する決まったパターンの単純作業を、RPAツールを導入することによって効率化を図るのもデジタル化の一つの方法です。ヒューマンエラーの防止やRPAとAIを組み合わせることで、売上分析の自動化や意思決定プロセスの高速化などより複雑な業務をデジタルで解決することが期待できます。
・社員教育の効率化
社員教育をデジタルコンテンツにすることで、業務の効率化や従業員の負担を軽減が期待できます。社員教育は重要な取り組みですが企業・従業員双方にとっては負担になっていることも事実です。基本的な業務マニュアルや就業規則をデータ化し、電子端末一つで従業員がアクセスできるようになります。さらに専門知識、基本的な顧客対応や接客マナーなどを動画にして、それぞれの端末で受けることも可能になります。
まとめ
モバイルとソーシャルメディアの急速的な普及により、消費者の購買行動はこれまでの定説では計り知れないほど進化しています。
小売事業者はデジタル化を推進し時代にあった対策を講じる必要があります。DXに取り組むことで生き残るばかりか成長拡大できる可能性も十分にあるのです。これまでに蓄積してきた自社の強みを活かしながら、業務プロセスやサービスの変革に向けて、始めの一歩を検討してみてはいかがでしょうか。